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社労士コラム
~【はじめての1か月単位の変形労働時間制】「うちに向いている?」がわかる制度の基本・導入ステップ・運用ルール~

記事作成日:2026 年 8 月 12 日
【はじめての1か月単位の変形労働時間制】「うちに向いている?」がわかる制度の基本・導入ステップ・運用ルール
監修者
社会保険労務士法人ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場 栄

3,500社を超える企業の就業規則改定を行ってきた実績を持つ。また、豊富な経験と最新の裁判傾向を踏まえた労務相談には定評があり、クラウド勤怠のイロハから給与計算実務までを踏まえたDX支援を得意としている。
https://www.human-rm.or.jp

目次

  1. はじめに
  2. 「1か月単位の変形労働時間制」とは?
  3. その制度導入は最適解?導入可否を決めるポイント
  4. 「1か月単位の変形労働時間制」を“入れるだけ”で終わらせない導入手順
  5. 制度導入によって切り開く経営戦略
  6. シフト変更の「許容範囲」をどう決める?システム導入で解消できる問題と残る課題
  7. まとめ

はじめに

人手不足や繁閑差への対応に悩む企業にとって、「1か月単位の変形労働時間制」は有効な選択肢の一つです。とはいえ、制度名は知っていても、「自社に向いているのか」「労働時間や残業代の管理にどう影響するのか」「シフト変更はどこまで可能なのか」と迷う人事担当者も少なくありません。本記事では、制度の基本を押さえながら、導入判断のポイント、運用のコツを解説します。

「1か月単位の変形労働時間制」とは?

1か月単位の変形労働時間制とは、1か月以内で設定した対象期間について、平均して週40時間以内となるように、各日の労働時間を事前に配分する制度です。その設定に基づき、日単位・週単位の基準で労働時間を管理します。労働時間は原則として「1日8時間・週40時間」を超えると時間外労働として扱われますが、この制度を適切に導入すれば、繁忙日に8時間を超える勤務や、特定の週に40時間を超える勤務をした場合でも時間外労働(残業)として扱われません。そのため、繁忙日にあらかじめ長めの労働時間を設定しておくことで、通常であれば時間外労働となる時間の一部を制度上の所定労働時間として扱うことができ、残業代の発生を抑えやすくなります。

項目 内容
制度の考え方 繁忙日は長めに働き、閑散日は早上がりや休日にして、1か月全体で労働時間を調整する
向いている職場 忙しい日や時間帯を、ある程度予測できる職場
できること 繁忙日に8時間超の勤務を設定し、別の日を早上がりや休日にできる
できないこと あらかじめ定めた勤務日・勤務時間を、企業の都合で後から変更すること
導入時に必要なこと 就業規則や労使協定で、起算日・対象期間・各日の労働時間等を事前に定めて労働基準監督署に届出

たとえば、医療・介護、宿泊、飲食、小売、警備、物流、設備管理など、シフト勤務や1か月の中で繁閑差のある職場では活用しやすい制度です。
この制度で特に大事なのは、勤務表を作る前の段階で「どの日に何時間働くのか」を決めておくことです。急に忙しくなったからといって、あとから勤務時間を1か月全体にならして調整する仕組みではありません。事前に決めた勤務日・勤務時間に沿って運用することが、制度を正しく使うための前提になります。

その制度導入は最適解?導入可否を決めるポイント

1か月単位の変形労働時間制は、単なる「忙しい日がある職場」向けの制度ではありません。導入判断で重要なのは、忙しい日や時間帯を事前に予測し、勤務表に落とし込めるかです。繁閑差があっても、直前のシフト変更が多い職場では、制度の前提である「勤務日・勤務時間をあらかじめ決める」運用と合わず、1か月単位の変形労働時間制として認められないおそれがあります。

導入に向いているのは、たとえば次のような職場です。

・交代制・24時間対応型

医療、介護、警備、ホテル、設備管理など。
日勤・夜勤・早番・遅番など、勤務パターンを事前に組みやすい職場。

・曜日・月内繁閑型

飲食、小売、美容、不動産、コールセンターなど。
土日祝、セール期間、予約集中日、月末月初など、忙しいタイミングが読みやすい職場。

・現場・案件集中型

物流、イベント運営、メンテナンスなど。
案件や現場の稼働日に合わせて、勤務時間を設計しやすい職場。

なお、上記のような職場でも、毎日ほぼ同じ時間で勤務している職場や、突発対応・欠員対応が多い職場、シフト確定後の変更が頻繁に起きる職場では、1か月単位の変形労働時間制が適さない可能性があります。

導入前には、次の3点を確認しましょう。

1.忙しい日・時間帯を1か月単位で見通せるか
2.「どの日に何時間働くか」を事前に決められるか
3.勤怠管理・給与計算・シフト管理の体制が制度運用に対応できるか

特に、「残業代を減らしたい」という目的だけで導入するのは避けるべきです。制度の目的は、単にコストを抑えることではなく、繁閑に合わせて無理のない働き方を設計することにあります。

「1か月単位の変形労働時間制」を“入れるだけ”で終わらせない導入手順

1か月単位の変形労働時間制は、就業規則や労使協定を整えれば終わりではありません。制度を現場で使える形にするには、対象範囲、勤務パターン、変更ルール、勤怠管理・給与計算までを事前に設計しておく必要があります。

STEP1:全社導入ではなく「向いている職場」を選定する

まず、制度を適用する部署・職種を決めます。全社一律導入ではなく、店舗、施設、現場、部門など、繁閑差があり、勤務表に落とし込みやすい単位から検討するとよいでしょう。看護師、介護職、ホテルフロント、店舗スタッフ、警備員、設備管理スタッフ、ドライバー、倉庫作業員など、勤務時間に変動が出やすい職種は候補になりやすいでしょう。

STEP2:給与計算・シフト作成に合う対象期間と起算日を決める

次に、制度の対象にする期間、つまり「変形期間」と「起算日」を決めます。1か月単位といっても、必ずしも暦月に合わせる必要はありません。「毎月1日から末日まで」「毎月16日から翌月15日まで」など、給与締め日やシフト作成サイクルとあわせると、運用しやすくなります。

STEP3:総枠だけでなく、日別・週別の勤務パターンまで設計する

対象期間内の法定労働時間を確認し、各日・各週の労働時間を具体的に決めます。繁忙日は長めの勤務時間を設定する代わりに、閑散日は早上がりや休日にするなど、勤務パターンをあらかじめ設計します。このとき、勤務時間の長さだけでなく、休憩時間や休日の確保、連勤日数、夜勤明けの休息、月をまたぐ勤務の労働時間の取り扱いも確認しておきましょう。これらは、法令上のルールや安全配慮の観点から見落とせないポイントです。勤務パターン設計の段階で押さえておくことで、後の労務リスクを低減できます。

STEP4:就業規則・労使協定に「変更ルール」も記載する

1か月単位の変形労働時間制は、就業規則等に定めるかまたは労使協定を締結する方法で導入できます。いずれの場合も、対象者、対象期間、起算日、各日・各週の労働時間を具体的に定めることが必要です。加えて、シフトの作成・周知方法や、やむを得ず変更が必要になった場合の手続きも明記しておくと、導入後の混乱を防ぎやすくなります。就業規則や労使協定を整備したら、所轄労働基準監督署への必要な届出も行いましょう。

STEP5:従業員だけでなく、現場管理者に説明する

制度は人事担当者だけが理解していても機能しません。対象者には「なぜ導入するのか」「シフトはどのように決まるのか」「残業や変更はどう扱われるのか」を説明します。特に現場管理者には、シフトを原則として自由に変更できないことを共有し、現場で判断に迷わないようにしておくことが重要です。

STEP6:勤怠管理・給与計算・承認フローを確認する

最後に、「勤怠管理」や「給与計算」が制度に対応できるかを確認します。事前に決めた勤務時間と実際の労働時間を照らし合わせ、時間外労働を正しく判定できるか、承認フローに無理がないかを確認しておきましょう。特に1か月単位の変形労働時間制では、日別・週別・月全体の労働時間、シフト変更履歴、給与計算への反映を正確に管理する必要があります。これらを手作業で行うとミスや確認漏れが起きやすいため、勤怠管理システムを活用すると、未払いリスクや運用ミスの防止につながります。

制度導入によって切り開く経営戦略

1か月単位の変形労働時間制は、単なる労務管理の制度ではなく、人手不足時代の人員配置を見直すための経営戦略にもなります。繁忙日に人員を厚く配置し、閑散日に早上がりや休日を組み合わせれば、限られた人員を必要な時間帯に集中させやすくなります。

たとえば、宿泊、飲食、小売、医療・介護などでは、常に同じ人数を同じ時間帯に配置するのではなく、来客数や業務量に応じて勤務時間を設計する方が、サービス品質を維持しやすくなります。また、業務量に応じて勤務時間や休日を計画的に設計することで、従業員が見通しを持って働きやすくなります。こうした職場づくりは、働きやすさの向上だけでなく、離職による採用コストや教育負担の増加を抑えることにもつながります。

一方で、勤務時間を柔軟に設計できるからこそ、現場任せの運用には注意が必要です。事前に決めた勤務日・勤務時間から外れる運用が常態化すれば、従業員の不満や労務リスクにつながりかねません。制度導入で目指すべきなのは、繁閑をその都度しのぐことではなく、「必要な時間帯に必要な人員を配置できる状態」を仕組みとしてつくることです。労務トラブルや未払い賃金リスクを防ぐためにも、コンプライアンスと現場運営の両立を意識した設計が求められます。

シフト変更の「許容範囲」をどう決める?システム導入で解消できる問題と残る課題

1か月単位の変形労働時間制を経営戦略として活かすには、現場で安定して運用できる仕組みづくりが重要です。なかでもつまずきやすいのが、シフト確定後の変更です。この制度は、労働日や各日の労働時間をあらかじめ決めておくことが前提のため、現場判断で頻繁に変更する運用には向きません。問題は「変更できるか」ではなく、やむを得ない変更が起きたときに、「誰が」「いつ」「どの理由で」「どう対応するか」を決めておくことです。

「変更理由」「申請期限」「本人同意の取り方」「管理者承認」「勤怠上の処理」「変更履歴の保存」などは、あらかじめ運用ルールとして定めておく必要があります。ここが曖昧なままだと、勤務表を作る「担当者」「現場管理者」「給与計算担当者」の判断が分かれ、残業代計算や労務管理でトラブルになりかねません。

勤怠管理システムを活用すれば、日別・週別・月全体の労働時間、変更履歴、承認状況、休憩不足や連勤のアラートなどを可視化できます。感覚ではなく、客観的なデータに基づいて運用できる点は大きなメリットです。

ただし、システムは「どこまで変更を認めるか」までは決めてくれません。例外対応の基準、現場管理者への教育、欠員時の応援体制は、企業側であらかじめ整理しておく必要があります。制度・システム・現場ルールをセットで整えることが、導入後の失敗を防ぐポイントになります。

まとめ

1か月単位の変形労働時間制は、繁閑差を勤務表に落とし込める職場にとって有効な制度です。ただし、導入すれば必ずしも狙った効果が出るとは限りません。重要なのは、自社に向いているかを見極め、労働日・労働時間を事前に設計し、シフト変更時のルールを明確にすることです。勤怠管理システムも活用しながら、制度を「入れる」だけでなく、「現場で使える形」に整えることが求められます。

セコムトラストシステムズからのご紹介

最後に、1か月単位の変形労働時間制の運用にも活用できる「セコムあんしん勤怠管理サービス KING OF TIME Edition」の機能をご紹介します。

「セコムあんしん勤怠管理サービス KING OF TIME Edition」では、「1か月単位の変形労働」の運用も、推奨設定を選ぶだけで主要なルールが反映されます。具体的には、月の総労働時間(基準時間)の算出や、日・週・月ごとの残業判定、深夜時間(22時〜翌5時)の設定などがあらかじめ登録され、複雑な計算を意識せずに管理が可能です。