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社労士コラム
~【「作業」を減らし「心」を掴む】入社手続きの戦略的システム活用~

記事作成日:2026 年 2 月 12 日
【「作業」を減らし「心」を掴む】入社手続きの戦略的システム活用
監修者
社会保険労務士法人ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場 栄

3,500社を超える企業の就業規則改定を行ってきた実績を持つ。また、豊富な経験と最新の裁判傾向を踏まえた労務相談には定評があり、クラウド勤怠のイロハから給与計算実務までを踏まえたDX支援を得意としている。
https://www.human-rm.or.jp

目次

  1. はじめに
  2. 入社手続きの全体像と「スピード」の絶対的価値
  3. 紙申請の見えないコストと電子化がもたらす圧倒的な生産性
  4. 提出の電子化だけでは解消されない「転記入力」という重労働
  5. 入社ラッシュの疲弊から脱却し人事にしかできない仕事へ
  6. まとめ

はじめに

膨大な入社手続きに追われ、新入社員のケアが後回しになっていませんか?
いまや手続きの「スピード」は従業員の安心に直結する重要課題となりました。本記事では、入社手続きの全体像を整理したうえで、電子申請のメリットを徹底解説。システム活用により作業時間を極小化し、人事が本来の価値を発揮するための戦略を提案します。

入社手続きの全体像と「スピード」の絶対的価値

入社手続きは、行政への届出だけで完結せず、内定時の準備から給与計算まで連続するプロセスです。タイムパフォーマンスを重視する現代では「手続き中だから待って」が通用しにくくなり、「スピード」が企業の信用や従業員体験を左右します。

Step1:入社前の契約・環境準備

入社日はスタートに過ぎず、人事担当者の仕事はかなり前から始まります。

  • 雇用契約の締結
    条件は口頭だけでなく書面(メール等)で明示し、内定承諾書を回収して入社意思を記録に残します。後日の認識違い防止に有効です。
  • 内定通知/労働条件通知と承諾
    労働条件の明示は法定義務です。それだけではなく、雇用契約書の取り交わしまで行いましょう。クラウド型電子契約サービスを活用すればスピード向上だけではなく、改ざん防止や本人性の担保、締結日時の客観的な証明にもなるため、労務トラブルの低減にもつながります。
  • 雇入れ時健康診断
    常時雇用者には雇入れ時健康診断が義務付けられています。入社前〜直後に受診できるよう早めに案内し、結果の提出方法も周知します。
  • 受け入れ準備(PC・アカウント・備品・周知)
    PC・スマホ・入館証・社員証などの貸与品や、メール・業務システムのアカウント発行をチェックリスト化し準備します。初日の機器未準備やアカウント未発行は、新入社員からの会社に対する印象に悪影響を与えます。
Step2:社会保険・労働保険関係

この領域が最もスピードを要求され、特に社会保険の遅延は従業員の生活に直結します。

  • 社会保険(健康保険・厚生年金)
    入社日から原則5日以内に手続きを行う必要があります。遅れればマイナ保険証や資格確認書への反映が遅れ、医療機関で保険診療を受けられない期間が発生し、一時的な10割負担の可能性もあります。企業側も未加入や遅れが発覚すれば、さかのぼって資格取得届の提出と保険料の支払いが必要になり、財務・レピュテーション上のリスクとなります。
  • 雇用保険
    雇用保険の手続きは「雇い入れた月の翌月10日まで」が期限です。実務上は社会保険とセットで入社直後に処理し、ラッシュ期でも漏れが出ないワークフローにしておくことが重要です。
  • 扶養家族の手続き
    扶養家族がいる場合は「被扶養者(異動)届」の提出が必要です。届出期限が短く設定されているため、入社前から扶養情報を収集し、入社と同時に手続きに着手できる状態にしておくのが理想です。
Step3:税金・給与計算関係

社会保険・労働保険と並行して、税金・給与計算に関する準備も行います。

  • 各種手当(家族手当など)の設定
    扶養情報をもとに就業規則・賃金規程に従って家族手当等の支給有無・金額を設定します。社会保険や税金上の扶養が自社基準と異なることもあるため、基準を整理して判定します。
  • 住民税の徴収方法の確認
    中途入社者は、前職での住民税徴収方法や精算状況を確認し、特別徴収への切替え等が必要か判断します。源泉徴収票とあわせて確認し、後工程の齟齬を防ぎます。
  • 給与計算と賃金台帳
    初任給支払いに向けて給与システムを設定し、支給日・締め日・控除項目・保険料率などを整え、新入社員ごとの情報を登録します。

ここまでの手続き自体は定型業務ですが、マイナンバー・基礎年金番号・扶養情報などの漏れのない収集と正確な入力が最大の負荷です。今では「完了までのスピード」の基準は上がり、リードタイム短縮は「手厚い福利厚生」ではなく、「業務品質の最低ライン」となっています。

紙申請の見えないコストと電子化がもたらす圧倒的な生産性

電子申請を一度でも経験した人事担当者は「紙申請には戻れない」と感じることでしょう。その背景には、紙運用特有の非効率さとリスクがあります。ここではそれを電子申請と比較して整理します。

紙による申請(窓口・郵送)
  • 時間とコストのロス
    移動時間、窓口での待ち時間、郵送日数・料金などは付加価値を生まないコストです。紙書類は役所側でシステムに入力されるため、この入力待ちが手続き完了までの期間を長くする一因になります。
  • 書類不備時のリードタイム増大
    記載漏れ・押印漏れなどがあると、返戻→再作成→再送付が必要となり、その分リードタイムが延びます。現在求められるスピード感とは構造的に相性が良くありません。
  • セキュリティリスク
    マイナンバー等の特定個人情報を紙やメールで扱う運用は、紛失・盗難・誤送信のリスクがあり、安全管理措置の面でも課題が多い方法です。鍵管理・保管場所・廃棄ルールなども含め、運用コストがかさみます。
電子申請
  • 24時間365日、自席から申請可能
    役所の開庁時間に縛られず、繁忙期でも担当者の都合で申請できます。移動・待ち時間コストがなくなり、本来の業務に時間を使えます。
  • リードタイムの短縮
    データが電子的に処理されるため、紙のような役所側入力待ちがなく、手続き完了までの期間を短縮できます。
  • 添付書類の電子化
    PDF等で添付できるため、コピーや郵送の手間が減り、原本保管と電子データ管理を分けて考えられます。

提出の電子化だけでは解消されない「転記入力」という重労働

電子申請への移行を決めたあと、「e-Govを直接使うか」「API連携した民間労務管理システムを経由するか」という選択が生じます。どちらも電子申請ですが、現場負荷の軽減具合が大きく異なります。

e-Gov(政府運営のポータルサイト)

e-Govは行政手続きをオンライン化する総合窓口で、無料で利用でき、ブラウザ入力またはCSV添付で申請します。しかし入社手続きの現場では、次の課題が目立ちます。

  • 解消されない「入力」のボトルネック
    e-Govは「役所への提出」を電子化するツールであり、「社内の情報収集プロセス」は自動化しません。多くの企業では、新入社員から紙・Excel・メールで情報を集め、人事担当者がExcelやe-Gov画面に転記しており、「情報収集」「転記入力」の負荷は紙時代とほとんど変わりません。
  • 転記ミスのリスクとその代償
    氏名の漢字、生年月日、マイナンバー、基礎年金番号などを手入力する以上、ヒューマンエラーは避けられません。申請後にミスが発覚すると、その分だけ手続き完了が遅れます。
  • 社内マスタとの二重管理
    e-Govに入力したデータは、人事マスタや給与マスタに自動反映されません。社内システムにも同じ情報を入力する必要があり、二度手間が発生します。
労務管理システム

民間の労務管理システムの多くはe-GovとAPI連携しており、「申請ツール」というより「業務フロー全体を見直す仕組み」として機能します。

  • 収集の自動化(内定者・新入社員による入力)
    最大のポイントは、情報収集の入口を変えられることです。紙の書類に手書きしてもらい転記するのではなく、内定者・新入社員が自分のスマホやPCからフォームに直接入力します。マイナンバーや基礎年金番号、本人確認書類は撮影してアップロードしてもらうことができるため、担当者は内容確認・承認に専念できます。
  • 最短でのデータ反映
    本人からの入力データをそのまま申請に利用できるため、転記ミスが大幅に減ります。正確なデータを少ない操作で送信でき、最短ルートに近い形で手続きが完了します。
  • マスタの一元管理
    申請に用いたデータはそのまま人事マスタとしてクラウドに蓄積されます。入社後の住所変更や扶養異動も同じシステムで更新でき、「最新情報がどこかわからない」状態を防ぎます。

両者の違いをまとめると、「e-Gov=提出を電子化」「労務管理システム=情報収集→提出→保管まで一気通貫で電子化」となります。転記ミスが許されずスピードが求められる今、解消すべき本当の課題は「提出する手間」ではなく、現場の担当者を苦しめている「情報収集」と「手入力」なのです。

入社ラッシュの疲弊から脱却し人事にしかできない仕事へ

ここまで述べてきたものは、「手続き=ハード」です。しかし入社プロセスの本質的な目的は、新入社員に「この会社でやっていけそうだ」という安心感を持ってもらうことにあります。
そのためには、「ハード(手続き)」はシステムに任せ、「ソフト(定着支援)」に人の時間とエネルギーを集中させる発想が欠かせません。

「ハード(手続き)」の完全自動化

社会保険手続きなどは重要でありながら「誰がやっても同じ結果であるべき」業務で、システム化との相性が高い領域です。ここをシステム活用により効率化できれば、入社ラッシュ期に毎日手続き画面と向き合う状態から卒業できます。

「ソフト(定着支援)」にリソース集中

システム導入で生まれた時間は、「人にしかできない仕事」に投資できます。
以下に挙げるものは、どれもシステムでは代替できない、人事担当者だからこそ価値を発揮できる領域です。こうした活動は、初期エンゲージメントの向上と早期離職防止に直結します。

  • 新入社員との1on1やメンタルケア
  • ウェルカムランチや同期コミュニティ形成支援
  • 企業文化・ミッション・バリューの共有
  • 配属先との橋渡しやメンター制度運用
  • キャリア相談や目標設定のサポート

まとめ

入社手続きにおける「スピード」は、マイナ保険証の反映など、従業員と家族の安心に直結する品質基準です。しかし、単にe-Govで提出を電子化するだけでは、現場の「転記・入力」負荷は解消されません。労務管理システムで情報収集から申請までを一気通貫で自動化し、事務作業を極小化し、生まれた時間を、新入社員のケアや定着支援といった「人にしかできない業務」に投資することこそが、これからの戦略的な人事の役割です。

セコムトラストシステムズからのご紹介

最後に、セコムトラストシステムズから、今回の記載内容とも関連する人事労務機能として、「セコムあんしん勤怠管理サービス KING OF TIME Edition」の機能についてご紹介します。

「セコムあんしん勤怠管理サービス KING OF TIME Edition」は、従来の勤怠管理機能に加え、人事労務機能や給与機能を新たに搭載し、入社手続きから日常の労務管理までを一元的にサポートします。これにより、入社時の情報収集や各種申請、給与明細の発行など、煩雑になりがちな人事労務業務をクラウド上で効率的に処理できるようになりました。

《入社情報の一元管理》

「セコムあんしん勤怠管理サービス KING OF TIME Edition」の「入社情報一元管理」機能では、内定者や新入社員が自分の端末から直接情報を入力・アップロードできます。これにより、担当者の転記や確認作業が大幅に削減され、情報の正確性も向上。収集したデータはクラウド上で一元管理され、入社後の住所変更や扶養異動もワンストップで対応可能です。人事業務の効率化と情報管理の質向上を同時に実現します。

《社会保険・雇用保険手続きの効率化》

社会保険・雇用保険の手続きも、「セコムあんしん勤怠管理サービス KING OF TIME Edition」ならシステム上で一括管理。提出期限や進捗状況を一元管理し、遅延や漏れを未然に防ぎます。電子申請機能により、複雑な手続きもスムーズに完了。扶養家族の情報や各種手当の設定も自動連携されるため、担当者の負担を大幅に軽減します。安心・確実な手続きで、従業員と企業双方の信頼を支えます。

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