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社労士コラム
~「勤怠システムで労働時間管理」~
従業員の勤怠管理は
しっかり出来ていますか?

記事作成日:2023 年 3 月 27 日
監修者
社会保険労務士事務所 労務サポート所長
社会保険労務士 後藤 昌雄

企業の人事労務に関する支援に15年以上の実績があり、実務経験に基づいた労務管理のノウハウや働く社員のルール作り、行政調査の対応等を提供。

目次

①労働時間管理とは?

労働時間は、「使用者」の明示又は黙示の指示により、労働者が業務に従事する時間のことです。
「使用者」とは、労働基準法(以下、労基法)第10条で「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。」と定義されています。

労働時間は、労働契約や就業規則などによって決められるものではなく、客観的に見て、労働者の行為が使用者から義務付けられたものかどうかなどによって判断されます。

この場合の義務付けは、「使用者の明示的・黙示的な指示」に基づくものです。
つまり使用者の「指示」に基づかない場合は労働時間ではないということです。

使用者の「黙示的な指示」は、時間外労働の算定で争われることが多く、労働トラブルの原因となりやすいため、時間外労働の「指示」は明確にしておく必要があります。

使用者は労働者の労働時間を適正に把握する必要があります。
厚生労働省が平成29年に策定した、「労働時間の適正把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、労働時間管理を目的別に「労働時間の適正な把握」と「適正な労働時間管理」に分けて示しています。

労働時間の適正把握:

対象は全ての労働者ですが、「管理監督者(労基法第41条)」と、「みなし労働時間制が適用される労働者」を除いています。
長時間の残業時間や割増賃金の未払いの問題を防ぐためです。

適正な労働時間管理:

全ての労働者が対象です。
労働者が過重労働で倒れたら、使用者が責任を負いますので、労働者の健康管理のためです。

②労働時間の把握方法

労働時間の適正な把握の方法は、原則として次の(1)、(2)のいずれかになります。

  1. 使用者が自ら現認(現場で確認)することにより、適正に記録する。
  2. タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録などの客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録する。

なお、(2)のデータは、あくまでも「基礎データ」であるため、必要に応じて、使用者の残業命令や従業員からの報告書との突き合わせを行い、データが適正なものであるかどうかを確認し、記録する必要があります。

このような方法を行っていない場合、対外的には打刻時刻がそのまま労働時間を記録していると判断される可能性が高いです。
使用者に求められる「労働時間の適正把握」から除外されている、みなし労働時間制のうち、「事業場外労働のみなし労働時間制」について以下で解説します。

③事業場外労働のみなし労働時間制

「事業場外のみなし労働時間制」は、労働者が労働時間のすべてまたは一部を事業場外の業務に従事した際、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間の算定が困難な場合において、一定の時間労働したとみなすことのできる制度です。

営業や記事取材など、比較的自由に事業場外で労働するため、使用者の具体的な指揮命令が及ばず、労働時間の算定が困難な業務に適用できます。

ただし、事業場外で労働した場合でも、使用者の具体的な指揮監督が及んでいる場合は、労働時間の算定が可能のため、みなし労働時間制の対象になりません。

問題となるのは携帯電話などの取り扱いで、使用者が定期的な連絡を義務づけたり、随時、指示したりして、業務の進捗状況を把握できる場合は、労働時間の算定が可能となるため、適用できないと考えられています。

しかし、具体的な業務遂行方法、時間の指示を使用者が行わず、労働者の裁量に任せており、携帯電話の所有が、下記の目的のためであれば、「事業場外労働のみなし労働時間制」を適用できると思われます。仮にGPS付き携帯電話で労働者の位置が把握できたとしても同様です。

  • ・使用者から指示するためではない。
  • ・臨時的な事情により、営業社員の判断で取引先との連絡に使用する。

「事業場外労働のみなし労働時間制」には、「全部が事業場外で行われる場合」と「一部が事業場外で行われる場合」の2つがあります。

<全部が事業場外で行われる場合>

業務を行うために、「所定労働時間」を超えて労働することが必要な場合には、業務を行うのに「通常必要とされる時間」を労働したものとみなします。

みなし
労働時間
内訳
所定
労働時間
所定労働時間 ≧ 通常必要時間
通常
必要時間
所定労働時間 < 通常必要時間

例えば、業務の繁閑を平均的にみて、業務を行うのに必要な時間が9時間であれば、みなし労働時間として定める時間は9時間とします。
みなし労働時間制を利用することで、労働時間が「法定労働時間」を超える場合には、超えた分の労働時間は、時間外労働として割増賃金の支払いが必要です。
上記の例で、みなし労働時間が9時間の場合は、1時間分が割増賃金の対象となります。

<一部が事業場外で行われる場合>

1日の労働時間の一部を事業場内で労働した場合、以下を合わせた時間が1日の労働時間とされます。
みなし労働時間制によって算定される「事業場外で業務に従事した時間」と、別途把握した「事業場内での業務に従事した時間」です。

この「事業場外で労働したとみなす時間 + 事業場内で労働時間が把握できる時間」が法定労働時間を超えると、割増賃金の支払が必要となります。(他のみなし解釈もあり)

帰社後の労働時間が一定程度見込まれる外勤の営業職などの場合は、事業場外労働とみなす時間を「所定労働時間」とするか、「通常必要とされる時間」として一定時間に留めるか、どちらが現実的かを考える必要があるでしょう。

実際の労働時間とかけ離れたみなし労働時間を設定することは、労働者に不満を募らせる要因となるので注意が必要です。

④出張の移動時間

原則として、出張先に向かう移動時間は、業務に従事しているわけではなく、通勤時間と同じと考えられます。

移動時間の過ごし方は、使用者の指揮命令下にあるとはいえず、原則として労働時間に該当しません。
通常は本を読んでいても寝ていてもよく、本人の自由な時間と考えられるためです。

ただし、出張先への移動時間が労働時間に該当する例外もあります。
例えば、商品の販売を促進する為に商品を運搬しなければならない、あるいは貴重品の運搬で十分な注意義務を負わされるなど、使用者の指揮命令下にあると評価される場合です。

この場合は、単なる出張先への移動ではなく、移動中に物品の監視業務を行うことになるため、移動時間も通常の労働時間として取り扱います。

⑤テレワーク(在宅勤務)

テレワークにおける労働時間の管理については、テレワークが本来のオフィス以外の場所で行われ、使用者による現認ができないため、労働時間の把握に工夫が必要です。

テレワークの労働時間管理方法は、「ネットワーク上の出退勤管理システムでの打刻」、次いで、「メールなどによる管理者への報告」、「パソコンなどの使用時間の記録」、「自己申告」の順に多いです。
(引用:日本労働組合総連合会 テレワークに関する調査2020「テレワーク時における時間管理方法」
https://www.jtuc-rengo.or.jp/info/chousa/data/20200630.pdf

テレワークにおいて、情報通信機器の使用時間の記録が労働者の始業及び終業の時刻を反映できない場合は、労働者の自己申告により労働時間を把握することが考えられます。
労働者の自己申告により労働時間を簡単に把握する例として、1日の終業時に、始業時刻及び終業時刻をメールなどにて報告させる方法があります。

使用者はその際に、メール送信履歴やパソコン起動記録などの客観的な事実と、労働者の申告時刻に大きなギャップを把握した場合、労働時間を補正する必要があります。

セコムトラストシステムズからのご紹介

最後に、セコムトラストシステムズから、外出時やテレワーク時の労働時間把握に役立つ「セコムあんしん勤怠管理サービス KING OF TIME Edition」の打刻手段についてご紹介します。

クラウドレコーダー

インターネットブラウザで、打刻用のURLにアクセスし、パスワード認証で打刻をするタイム
レコーダーです。打刻用URLは所属ごとに発行することができます。

Myレコーダー

従業員ごとに発行されたURLにアクセスし、打刻をする個人別のタイムレコーダーです。
打刻時に、位置情報を取得するかどうかを設定することもできます。
ブックマークやショートカットを作成することで、アプリ感覚で使用いただけます。

PCログイン連携

PCへのログイン・ログオフのログを、打刻として記録することができます。
ご利用には、クライアントソフトウェアのインストールが必要です。

上記の他に、ICカードリーダーや指静脈リーダーといった打刻専用端末や、セコムの入退室管理システムとの連携など豊富な打刻手段をご用意しています。
詳しくは以下ページをご参照ください。
https://www.secomtrust.net/service/kot/record/index.html