お役立ち記事

社労士コラム
~法定休日の特定は必要か?~
法定休日を正しく理解しよう

記事作成日:2024 年 7 月 1 日
監修者
社会保険労務士法人ヒューマンリソースマネージメント
代表社員 特定社会保険労務士 馬場 栄

3,500社を超える企業の就業規則改定を行ってきた実績を持つ。 また、豊富な経験と最新の裁判傾向を踏まえた労務相談には定評があり、クラウド勤怠のイロハから給与計算実務までを踏まえたDX支援を得意としている。
https://www.human-rm.or.jp

目次

「就業規則に法定休日を定めていないけれど、割増手当などの計算方法があっているか心配…」
「法定休日を定めておいた方が賃金計算も簡便だと聞くがよくわかっていない…」
といった悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

そこで本記事では、法定休日の概要について紹介したうえで、法定休日の例外や振替休日の付与方法、加えて休日の割増手当の考え方や、法定休日を特定している場合としていない場合の時間外割増の計算方法について解説していきます。
本記事を通じて、法定休日について正しく理解を深めていきましょう。

①法定休日とは

法定休日とは、労働基準法に基づき、労働者に必ず与えなければならない休日のことです。少なくとも週に1回の休日を与える必要があります。別の休日がある場合は、法定外休日となります。

たとえば、土日を休日としている企業の場合、そのうち1日が法定休日となり、もう1日は法定外休日となります。原則、法定休日は週ごとに1回、休日を与える必要がありますが、例外として週に1回ではなく、4週間を通じて4回休日を与える方法でも問題ありません。

土日が休日で、法定休日を何曜日と特定していない場合、法定休日はどのように考えればよいでしょうか。
事前に法定休日の曜日を特定していれば問題となりませんが、特定していない場合で1週間すべての曜日に勤務した場合に、どちらの休日に対して休日割増手当を支払うか悩むことがあると思います。
この点に関して、行政解釈を見てみると、週の休日のうち、いずれの休日を法定休日として取り扱うかについて、下記のように記載されています。

  • ・法定休日を特定していない場合で、休日の両方に勤務した場合、暦週において後順に位置する休日が法定休日労働となる。

たとえば、下図のように、週の起算が日曜の場合、後順となる土曜日が法定休日となります。一方で、週の起算を月曜としている場合は、後順となる日曜日が法定休日となります。

週の起算日は、企業独自に就業規則で定めることが可能です。就業規則に特段の定めがない場合には、日曜日を起算日として取り扱います。

②法定休日の例外について

法定休日は、暦日つまり0時00分から24時間休ませているかどうかで判断されます。

例として、日曜日を法定休日とし、土曜日の勤務が夜遅くまで続き、日を跨いで日曜日の午前1時まで勤務したと仮定します。
この場合、退勤した日曜日の午前1時から翌日月曜日の出社時刻の9時まで24時間以上空いていますが、これでは休日を与えたことになりません。

基本的には上記の取り扱いとなりますが、日常的に暦日をまたぐような働き方の場合は、次のような例外が適用されます。

1. 8時間3交替連続勤務の番方編成の場合

就業規則等で番方編成として、3つの番方の交替が規則的に定められており、勤務表で都度明示されない運用となっている場合、継続24時間の休みを与えることで休日を付与したことになります。

2. 旅館業の場合

旅館業の場合、フロントスタッフ、客室スタッフなど、一部の職種に限り、下記の2つの要件をクリアすることで休日を与えた扱いとすることができます。

  • ①2暦日にまたぐ休日となることおよびその時間帯が労働者に明示されていること
  • ②正午から翌日の正午までの24時間を含む継続30時間(当面の間27時間)の休息が確保されること

3. 自動車運転者の場合

タクシー、トラック、バスをはじめとする自動車運転者については、令和6年4月の法改正により、休日の考え方が一部変更されております。 基本的には、休息時間+24時間の連続した時間を与える必要があります。この休息時間については改善基準告示にて9時間以上と定められているため、実質「9時間+24時間=33時間」の連続した時間を与えることで休日を取得したと扱うことができます。 また、隔日勤務と呼ばれる1回の勤務で2日分働く場合については、休息時間20時間+24時間(計44時間)(タクシー・ハイヤー運転手の場合、休息時間22時間+24時間(計46時間)を与える必要があります。

詳しくは下記の厚生労働省HP内、改善基準告示の内容をご確認ください。
自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(厚生労働省)

③法定休日を半日で与えても良いか?

法定休日に半日出勤する代わりに、振替休日を半日で与えることは問題ないのかと疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。具体例を用いて解説していきます。下記の図の例のように、法定休日と特定している日曜日のうち、午前のみ振替出勤し、水曜日に半日の休み(振替休日)を取らせた場合で考えます。

すでにお伝えしているとおり、法定休日は暦日で与えなければいけないという大原則があります。
この例のように日曜日の半日出勤の代わりに水曜日に半日休みを付与したとしても、法定休日を与えたことにはなりません。よって、この週については、法定休日を与えたことにはならず、日曜日は休日出勤扱いとなり、休日割増手当を支払わなければなりません。

一方で、法定外休日の場合には、暦日で休みを与えるという制約がないため、半日出勤に対して、休みを半日付与することに問題はありません。
以上のように、休日出勤が法定休日か法定外休日により半日で振替休日が付与できるかどうかが変わってきます。

また、休日出勤の代わりに事後的に休日を与える代休制度の場合ですが、代休はそもそも法律に明文化されていないため、法定休日・法定外休日問わず休みを半日ずつ付与しても問題はありません。

まとめると以下のようになります。

法定休日 法定外休日
振替休日 ×半日付与不可 〇半日付与可
代休 〇半日付与可 〇半日付与可

ただし、従業員の方の健康管理という側面から考えると、暦日で休日を与える方が好ましいでしょう。

④前日の勤務が長引き日跨ぎで勤務した場合、休日割増手当は何時からが対象になる?

平日から休日に跨いで勤務をした場合、割増賃金はどのように考えるべきでしょうか。

まず、時間外割増手当(25%)についてみていきたいと思います。
行政通達によると、2暦日にわたって継続勤務が行われる場合、その継続勤務全体で1勤務として考え、全体を始業時刻の属する日の労働として取り扱います。
よって、法定の時間外労働に関する割増賃金を計算する場合には、始業からの連続した時間で考え、法定労働時間を超えた時間に対して割増賃金の計算を行うこととなります。

続いて、休日割増手当(35%)についてみていきたいと思います。
前述のとおり休日については暦日(0時~24時)を基準に考えます。よって、今回のケースにおいては、2暦日にわたって勤務はしているものの休日へ跨いでの勤務となるため、暦日を基準として日付が変わった0時からは休日割増手当として計算を行うこととなります。

上記の説明を図解にすると下記のとおりとなります。

⑤法定休日を特定している場合、月60時間超過の時間外割増の計算も変わる

法定休日を特定している場合と特定していない場合では、月60時間超過の時間外労働の算定に違いがあります。

休日である日曜日に出勤した際について解説していきます。

1. 日曜日を法定休日と定めている場合

同一の週に1回の休日を与えていたとしても、日曜日の勤務は休日割増手当(35%割増)を支払う必要があります。休日出勤である日曜日の勤務は時間外労働に含めて計算しないため、月60時間の時間外労働の計算に含める必要はありません。

2. 法定休日を定めていない場合

同一の週の別の日に1回の休日を与えていれば、休日割増手当(35%)の支払いは不要です。しかし、日曜の出勤については休日割増手当を支払う必要がある休日出勤ではないため、時間外労働に含める必要があり、1日8時間、週40時間を超過していれば、時間外労働にあたる時間を月60時間の計算に含める必要があります。

60時間を超えて残業させた場合には、60時間を超過した時間に対して、50%の割増賃金の支払いが必要となります。この残業時間については、平日と法定外休日の労働時間が法定労働時間である1日8時間、週40時間を超えた時間を合計して計算していくこととなります。

企業独自に、法定外休日に出勤した場合には、法定外休日の労働をすべて25%割増で一律支払っているケースもあるかと思います。その場合、法定外休日の勤務すべてに割増手当を払ってはいますが、残業計算においては、法定労働時間を超過した時間のみ計算すれば問題ありません。

たとえば、1週間のうち、土日以外に祝日もある週については、労働日は4日となり、1日法定外休日に出勤をしたとしても、その週の労働時間が法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超過していなければ残業時間として計算しなくてもよいのです。

以上のように、法定休日を定めておらず、土日のどちらかを法定休日として扱うかにより、60時間超過の計算に時間外労働を入れないことも可能ですが、労働基準監督署に届出している休日労働に関する36協定の範囲内で行う必要があるため注意しましょう。

⑥まとめ

ここまで、法定休日の取り扱い方ひとつで割増手当の考え方が異なることを解説してきました。法定休日を特定している場合としていない場合で、割増賃金の計算方法も変わります。これを機に正しく運用ができているか、改めて就業規則や計算方法を確認してみましょう。

セコムトラストシステムズからのご紹介

最後に、セコムトラストシステムズから、法定休日と法定外休日に関する「セコムあんしん勤怠管理サービス KING OF TIME Edition」の機能についてご紹介します。

「セコムあんしん勤怠管理サービス KING OF TIME Edition」では、法定休日と法定外休日を適切に管理することができますので、正確な割増賃金管理にお役立ていただくことが可能です。

休日労働時間の表示については、日や月単位で休日労働時間を「法定休日」と「法定外休日」に分けて表示することができます。

さらに、休日自体を入れ替える“振替休日”と、休日勤務後に他の労働日に休日を与える“代休“の管理も正しく運用いただくことで、休暇取得日数の管理や割増賃金の計算も正しく行うことが可能です。
「セコムあんしん勤怠管理サービス KING OF TIME Edition」では、従業員から申請するワークフローの機能もございますので、併せて活用することでさらに便利にご利用いただけます。