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社労士コラム
~「知っておきたい 休日と休暇の違い」~
代休と振替休日の処理は?

記事作成日:2023 年 3 月 16 日
監修者
社会保険労務士事務所 労務サポート所長
社会保険労務士 後藤 昌雄

企業の人事労務に関する支援に15年以上の実績があり、実務経験に基づいた労務管理のノウハウや働く社員のルール作り、行政調査の対応等を提供。

目次

年末年始の期間等を「休暇」として就業規則に記載している企業も多いと思います。
「休みならば休日ではないか」と疑問に思う方もいるでしょう。
今回は休日と休暇についての話です。似ている言葉ですが実は、休日と休暇は別のものです。

①休日には2種類ある

休日とは雇用契約上、労働する義務を負わない日のことを言います。

労働基準法(以下、労基法)で定められた法定休日と、各企業が就業規則などで任意に決める法定外休日の2種類があります。

週休2日制の企業であれば基本的に、週1日は「法定休日」となり、もう1日は「法定外休日」(所定休日)となります。

図表:週休2日制の例
曜日
日程 勤務 勤務 勤務 勤務 勤務 法定外休日 法定休日

① - 1 法定休日(労基法での休日)

原則

労基法では週に1回、休日を付与しなければならないとされています。
この休日を法定休日と呼びます。変形労働時間制を採用している場合においても、この原則は変わりません。

仮に、1年単位の変形労働時間制を適用し、週に1回の休日を与えるとした場合、週の初日と翌週の最終日を休日とすれば、12日の連続労働が可能になってしまいます。
それを防止するために、週6日の連続労働を上限としています。1年という長期間、週40時間を達成し続ける上で、労働者への負担が多いという理由からです。
(労使協定で定めた特定期間を除く)

例外(4週4日制)

原則として1週1日の法定休日の付与をしなければなりませんが、起算日を明確にして4週ごとに区切り、その期間内に4日休日があれば、法定休日を付与したこととなります。
起算日は賃金計算期間ごとに変わるものではなく、起算日から4週ごとに期間を区切り計算します。

① - 2 法定外休日

労基法では労働時間を1日8時間、1週40時間を上限としています。
企業の1日の所定労働時間を8時間とした場合、5日で40時間になってしまうため
基本的に週に5日間しか働かせることができません。

労基法の休日は週1日ですが、1週40時間を満たすためには、1日の休日では足りなくなってしまいます。
そのため、週休2日制となり「1週40時間の範囲内で所定労働時間を設定するため」与える休日が、法定外休日(所定休日)です。

企業の1日の所定労働時間を8時間とした場合、この法定外休日(所定休日)は労基法が「休みなさい」と言っている休日ではなく、「週40時間を守りなさい」というルールを守るために与える休日です。

②休日の割増賃金は?

法定休日の割増賃金

法定休日に出勤させた場合には3割5分以上の割増率による割増賃金を支払う必要があります。

法定外休日の割増賃金

法定外休日に出勤させた場合、かつ、その週の勤務時間が40時間を越えた場合には2割5分以上の割増率による割増賃金を支払う義務があります。(変形労働時間制での例外を除く)

③休暇にも2種類ある

休日と似たものに休暇があります。休暇とは、もともと労働義務のある労働日に、法律や就業規則などに基づき、労働者の意思表示により、その労働義務を免除される日のことを言います。なお「休暇」にも、「法定休暇」と「法定外休暇」があります。

③ - 1 法定休暇(休業)

法定休暇の代表的なものが「年次有給休暇」です。
その他に、産前産後休業、育児休業、介護休業などがあります。
生理休暇については、労基法68条により社員から休暇請求があった場合は就業させてはならないとしています。

女性社員が母子保健法の規定による健康指導又は健康検査を受けるために必要な時間の休業を申し出た場合、事業主は申出に応じなければなりません。

図表:法定休暇・休業の種類

③ - 2 法定外休暇

企業が就業規則などで任意に定める独自の休暇で、特別休暇と呼ばれることが多いです。
一般的に夏季、冬季休暇、結婚休暇、忌引休暇などがあります。
慶弔休暇や療養休暇、またはリフレッシュ休暇など、名前や内容はさまざまで、有給か無給かは、企業が自由に決められます。

④休日と休暇の注意点

「休日」は労働義務のない日、「休暇」は労働義務のある日に「休みたい」と意思表示をして初めて労働が免除される日です。

例えば年末年始の期間を企業が「休暇」として定めていれば、本来はその期間は働かなければならないため、企業としての労働日や労働時間に含めるべき日になります。

一方で、年末年始の期間を「休日」として定める場合には、そもそも働く義務がない日のため、労働日や労働時間にも含まれません。

そのため、この期間を「休暇」と定めるか「休日」と定めるかによって、残業代の計算などで用いられる時間単価に影響を及ぼします。

年末年始の期間を6日間と仮定して、例を挙げます。
この6日間を「休暇」とする場合は、労働日に含まれるので、この6日間も含めて月間の所定労働時間を算出します。

一方、6日間を「休日」とする場合は労働日に含まれないので、この6日間は除いて月間の所定労働時間を算出します。

休暇と定めた場合
日付 12/29 12/30 12/31 1/1 1/2 1/3
労働日
休日と定めた場合
日付 12/29 12/30 12/31 1/1 1/2 1/3
労働日 × × × × × ×

つまり「休暇」の扱いにすると、所定労働時間が大きくなるため時間単価は小さくなり、「休日」として扱うと所定労働時間が小さくなるため時間単価は大きくなります。

「休暇」と規定されているにも関わらず、「休日」扱いで残業代の計算を行った場合、残業代が予期せぬ形で負担となるので、混同しないよう注意が求められます。

⑤振替休日

振替休日とは、本来の休日と労働日を事前に交換することで、本来、休日だった日を通常の労働日として取り扱うことを言います。振替休日の要件は以下の3点です。

  • 1 就業規則に振替休日のルールの定めがあること
  • 2 振替休日は休日出勤する前にあらかじめ特定しておくこと
  • 3 休日を振り替えた後でも、少なくとも1週に1日の休日が確保されていること

休日出勤後に休日を特定する場合は「代休」になってしまうため、振替はあくまで休日出勤する前でなければ認められない点がポイントです。

「休日の振替」は、休日労働ではないため、休日出勤の割増手当の支払の必要はありません。

ただし、休日の振替により、週40時間を超えた場合や、1週1日(4週4日)の要件を満たさない場合には、割増賃金の支払いが生じます。

そのため、振替日はできるかぎり、休日労働をさせた日に近接した日が望ましく、週をまたぐ休日の振替には注意が必要です。
振替休日であれば、どんな場合でも割増賃金は発生しないと考えることは間違いです。

⑥代休

代休とは、休日出勤した後で、その分、他の労働日を休日とする権利を労働者に与えることをいいます。代休は与えても、与えなくても法律違反にはなりません。

代休とは振替休日とは異なり、休日に出勤する事態が発生してから、労働日を休日にするものです。

そのため、法定外休日に労働させた場合には2割5分以上、法定休日に労働させた場合には3割5分以上の割増賃金が発生することになります。

休日出勤日と代休取得日が同じ賃金計算期間内の場合

休日出勤に対して法定の割増率で計算した賃金を支払います。そして代休を付与した日を「欠勤扱い」として1.00を差し引きます。これにより実質的に0.25や0.35などの割り増し部分のみを支払ったことになります。

休日出勤日と代休取得日が賃金締め切り日をまたぐ場合

労基法では、「賃金支払いの原則があり、所定支払日に支払が確定している全額を支払わなくてはならない」となっているため、当月分の所定支払日に「通常賃金+割増賃金分」を支払い、翌月分の所定支払日に「代休日の賃金」をカットする必要があります。

(2)の「休日出勤日と代休取得日が賃金締め切り日をまたぐ場合」のほうが、事務処理が煩雑になるため、代休を取得させる場合には、なるべく同じ賃金計算期間内に取得することをおすすめします。

セコムトラストシステムズからのご紹介

最後に、セコムトラストシステムズから、休日・休暇の管理について「セコムあんしん勤怠管理サービス KING OF TIME Edition」の便利な機能をご紹介します。

慶弔休暇、夏季休暇など独自の休暇制度

慶弔休暇やリフレッシュ休暇、夏季休暇、年末年始休暇など、企業独自の休暇を作成することができます。
休暇失効の1か月前にメール通知するアラート機能を、休暇ごとに設定することもできるので、取得忘れを防ぎ休暇管理の煩雑さを軽減できます。

振替出勤日と振替休日の申請

振替出勤日と振替休日をセットで申請することができます。
1回の申請で振替休日と振替出勤日を入れ替える事ができるので、振替休日の取得忘れや申請漏れを防ぐことができます。