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その安心は、私たちが守る。

BUSINESS STORY

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ANSHINの、その先へ。

『セコム安否確認サービス』
安定性向上プロジェクト

Prologue

大規模災害発生時に、企業の事業継続・早期再開に必要な被災情報の収集・共有化をサポートする『セコム安否確認サービス』は、約8,950社・830万人※が利用する危機管理サービスである。2004年のサービス開始以降、機能追加やインフラ増強など絶え間なく進化を続けてきたが、さらなる安定性向上を目指し、東京と大阪の2拠点で稼働するシステム構成へのリニューアルに挑戦することとなった。
※2024年3月末時点

Project Memberプロジェクトメンバー

  • Y.M.

    クラウドサービス1部
    第2グループ 課長
    2014年入社
    文学部国際言語文化学科卒

  • K.T.

    クラウドサービス1部
    第1グループ 担当マネージャー
    2014年入社
    情報システムコース卒

  • T.K.

    クラウドサービス1部
    第1グループ 担当マネージャー
    2018年入社
    経済学部経済学科卒

  • T.Y.

    クラウドサービス1部
    第1グループ
    2020年入社
    工学部都市環境システム学科卒

まずは、『セコム安否確認サービス』について教えてください。

Y.M. セコムの『セコム安否確認サービス』がスタートしたのは2004年のことでした。現在では約8,950社・830万人のもの契約ユーザーを抱える日本最大のサービスとなっています。災害時でも確実にメールを届けるための高速メール配信の仕組みとして、大手キャリアにおいて、当社専用の特定接続領域が確保されています。これにより、災害発生時の通信規制時でも各キャリアへ高速メール配信が可能です。また、スマートフォンアプリの実装やLINEとの連携など、サービス内容を充実させてきました。2016年の熊本地震や2018年の大阪北部地震では大量の安否報告を受け付けることができ、『セコム安否確認サービス』は非常に高い評価を受けました。

K.T. 私は茨城県の出身で、3.11東日本大震災の経験から、地震対策関連の仕事に就きたいと考えていました。セコムトラストシステムズに入社したのは、この『セコム安否確認サービス』の開発・運用を担っていると知ったからです。

T.K. 『セコム安否確認サービス』は、大規模災害時の初動対応と備えをトータルにサポートするものです。事業継続に必須のものと評価されていることを、誇らしく思います。

T.Y. 私は学生時代に土木工学を専攻し、地震被害について研究していました。災害発生時に社会の力になれる仕事を希望していたので、『セコム安否確認サービス』に携わることになって嬉しかったです。

Y.M. 『セコム安否確認サービス』に携わる私たちは大きな地震があった際には、直ちにシステムの稼働状況を確認しています。ところが2021年10月に千葉県北西部を震源地とする地震が発生し、東京で最大震度5強を記録したとき、主要な技術メンバーの殆どが帰宅中であり、停止した電車の中で運転再開を待たされ、直ぐにシステムの稼働状況確認が行えない状況でした。

K.T. これまでなら自宅や外出先でもリモートアクセスで対処できる状況でしたが、さすがに多数の人が乗車している電車内ではそうはいかず、相当あせったのを鮮明に覚えています。「この状況でもしシステムトラブルでも発生したらすぐに対処できない」と不安な気持ちでいっぱいでした。

T.Y. 当時の私は自宅からシステムの稼働確認を開始していましたが、多くの先輩たちがすぐにリモートアクセスできない状況であることを知り、急に心細くなりました。私はまだ2年目でしたので、「もしシステムトラブルが発生していたらどうしよう」「東京データセンターが被災していたらどうしよう」と不安になったことを覚えています。

Y.M. 後日の反省会においても、「首都直下型地震が発生した場合には東京はもっと大混乱になる。もし東京データセンターから大阪データセンターに切り替える事態となった場合、本当に迅速に切り替えられるのだろうか?」という懸念が大きくなりました。セコムブランドの「安全・安心」をさらに追求するためにも、システムの見直しは必須だと感じました。サービスを立ち上げたのは2004年のことで、当時は実現できなかったものも最新のテクノロジーを活用すればきっと解決できることがあるのではないか。そうした考えのもと動き出しのが、「東阪デュエルアクティブ化」だったのです。私たちはすぐにそのプロジェクトの推進担当となりました。

プロジェクトの立ち上がりについて教えてください。

Y.M. 万が一東京データセンターが被災しても、切り替え作業を行わず大阪データセンターだけで『セコム安否確認サービス』が継続して提供できるように、両方のデータセンターが常にデュアルでアクティブ稼働している状態にするプロジェクトです。私は全体の管理監督に当たり、開発リーダーはK.T.さんが務めてくれました。

K.T. これまでに経験したことが無い大きなプロジェクトでしたが、必ずやり遂げてみせると思いました。特に不安はありませんでしたね。

T.K. 私もモチベーションは高かったです。サービスの安定性を向上させることでお客様により高品質なサービスを提供することができますし、同時に自分自身のスキルアップにもつながると思いました。

T.Y. 私はK.T.さんがいつも活躍されている姿を見て、自分もいつかは誰からも頼りにされる存在になりたいと思っていました。だから今回抜擢されたときはとても嬉しく、「K.T.さんと一緒に仕事ができる!尊敬する先輩からいろんなものを吸収してやろう」と奮い立ちました。

Y.M. みんな非常に前向きで頼もしかったですね。私の本音を言えば、技術的な課題は多く、しかもスケジュールがとても厳しいものでしたので、現実的な計画に落とし込めるだろうかと途方に暮れました。万が一、うまくいかなかったときに社会に与える影響も非常に大きいですし。

K.T. 確かにタイトなスケジュールでしたね。しかしアサインされたメンバーを見て、彼らなら必ずやり遂げてくれると確信しましたよ。T.Y.さんは当時はまだ経験が浅かったですが、今回のプロジェクトでたくさんのことを吸収して、今後の主軸になってほしいと期待しました。

T.Y.  ありがとうございます。とにかく先輩方の足を引っ張らないように自分にできることに集中しようと、自分に言い聞かせました。

T.K. プロジェクトが立ち上がったのは2021年11月で、メンバーは10数名でしたね。

K.T. 進め方としてはメンバーがそれぞれのタスクをこなし、毎週の定例会で進捗状況を共有。都度発生する課題についてその解決策を話し合う進め方で、一般的なプロジェクトと大きく変わりはありませんでした。ただしY.M.さんが言ったように、技術的な難易度は非常に高かったです。

Y.M. 東京と大阪のデータセンターで同じプログラムが動き、同じデータを持ち続けることがこのプロジェクトの大前提です。アクセスの受付も両センターでできるようにしなくてはいけませんでした。インフラ構成を大規模に変更する案件でしたので、1つのミスでも影響は大きく、慎重に進めていかなくてはなりません。しかもスケジュールに余裕はなく、常に緊張感を持って取り組みました。

T.Y. 私はK.T.さんのもとで、東京・大阪がともにデュアルアクティブになった際の性能評価を担当しました。インフラ系の基盤に携わりながらの仕事は初めてでしたので、ものすごく重要な仕事だと興奮しながら取り組みました。

どのようなハードルがありましたか。

Y.M. 『セコム安否確認サービス』は2004年から20年近くご利用いただいてきました。その間、メインである東京で災害が発生しても大阪に切り替えることでサービスは継続されるとの認識が、社内外に広く定着していましたし、定期的な切り替え訓練も行っていました。この基本構成を大きく変更することについて、より安心してサービスを利用していただくために、セコム社内はもちろんのこと、お客様に正しく情報を整理しどのように伝えていくかが大きな課題でした。

T.Y. 何かあったとき、ポジティブなことネガティブなことに関わらず、すべてきちんと公表し情報を伝えていくのはセコムらしいカルチャーですよね。

Y.M. 新たな機能を実装したり、インフラ構成を変える際も、必ずお客様にお知らせすることが社内ルールになっています。そうした姿勢を会社が貫いているため、私たち社員にも「隠しごとはせずに、ネガティブなこともすぐに報告する」との考えが浸透しています。

K.T. プロジェクト自体は動き出したら比較的順調に進めることができたと実感しています。その中でも、クラウド環境については他の専門部署が手がけている基盤だったこともあり、その理解には少し手間取りました。

T.K. 私は特に時間管理に気をつけました。技術的には手探りの部分もあったので万全を期すために何度もリハーサルが必要になり、限られた時間内にいかに効率的に検証を進めていくか、苦労しました。

T.Y. 私の場合、先ほどもお話ししたように土木工学を専攻していたので、ITの知識はほぼゼロで入社しました。ですから、特に基盤系の知識については、プロジェクトに参画しながら学んでいきました。K.T.さんが他部署の技術者と相談する際に同行して、話を聞かせてもらったり。

K.T. T.Y.さんはこのプロジェクトを通じて、目に見えて成長したと感じています。私も様々な作業を手伝ってもらい、本当に助かりました。

リリースはうまくいきましたか。

Y.M. はい、成功しました。リリースに備えて非常に細かな作業手順を用意した上で、一度に全部切り替えるのではなく、数回に分けて東阪データセンターのデュアルアクティブ化に向けた切り替えを行いました。とにかく安全第一。万一、想定外のアクシデントが発生しても、お客様への影響は無いようにすることを考えました。

K.T. 初回の切り替えはさすがに緊張しましたね。何度も検証を繰り返していたので自信はありましたが、実際に切り替えた瞬間は“本当に大丈夫だろうか” と不安も感じたのですが、直後に想定通りお客様からのアクセスがくるようになって、ようやく“成功したんだ”と実感がわいてきました。

T.K. 『セコム安否確認サービス』は昼夜を問わずお客様に利用されていますから、すぐにアクセスがあります。

Y.M. 私は切り替え現場の作業には立ち会っていなかったので、K.T.さんから「うまくいった」と連絡を受けて、心からホッとしました。

T.Y. 私も現場に立ち会わせてもらい、東阪データセンターのアクセスログを見ながら、K.T.さんと「これで大丈夫ですね」と一息つきました。その後、祝杯代わりに一緒にラーメンを食べに行ったのを覚えています。

Y.M. 切り替えに成功したといっても、お客様目線では何も変わっていません。お客様が利用する機能やUI自体は同じですから。ですからその後も特にリアクションはなかったのですが、そのこと自体が切り替えが成功したことの証であり、時間が経つほどに実感できるできごとでした。

T.K. そういえば、リリース後に地震がありましたよね。北海道で。

T.Y. 切り替えてから最初の地震だったので、何事も起こらず稼働するかどうか、少しドキドキしました。

Y.M. もちろん『セコム安否確認サービス』は正しく稼働し、お客様にも安心してご利用いただくことができました。我々もここで初めて「東阪デュアルアクティブ化」という大仕事をやり遂げた実感が得られましたね。

このプロジェクトの社会的意義について、どうお考えですか。

T.K. 甚大な被害が想定される首都直下型地震に備え、各企業は早急に復旧するためのBCPに力を入れています。今回の東阪デュアルアクティブ化によって、東京のデータセンターが被災した場合でも大阪のデータセンター内のシステムで『セコム安否確認サービス』が稼働し続けることが可能となりました。更に2023年5月には「関西技術部」が発足し、システムのデュアルアクティブ化だけではなく、エンジニアのデュアル化も実現したんです。お客様にはより有効なBCPを実現していただけると考えています。

K.T. セコムトラストシステムズのホームページには、「変わりゆく社会に、変わらぬ『ANSHIN』を」とメッセージが載っています。今回のプロジェクトを通じて、この言葉通り“変わらぬ『ANSHIN』”が提供できたと感じています。セコムのブランド価値を高めることにも貢献できたのではないでしょうか。

T.Y. 私も同意見です。個人的には今回のプロジェクトを経験して、『セコム安否確認サービス』の基盤の構成などへの理解が深まったことを嬉しく感じています。今後、想定外のインシデントが発生した際は、先輩方のように中心的な立場で活躍できるようになりたいと思います。

Y.M. 『セコム安否確認サービス』は約8,950社・830万人が利用するサービスです。これほど多くのお客様に向け、遅滞なく高品質のサービスを提供できていることを、改めて誇らしく感じています。現在は画面デザインの刷新やサービス全体の仕様のリニューアルを検討するフェーズに入っており、より社会的貢献度の高いサービスを構築したいと考えています。

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