データセンター導入ガイド - 比較・選び方をわかりやすく解説

2026.03.13

企業のIT基盤を支えるデータセンターは、安定稼働とコスト最適化のために慎重な選定が必要です。本記事では、比較・選び方のポイントをわかりやすくご紹介します。

データセンターを比較するための基準

データセンターを比較する際、「価格」や「立地」だけで判断すると、運用開始後に電力不足、拡張制限、セキュリティ要件との不整合といった課題が顕在化する可能性があります。そのため、初期条件に加えて、長期運用を前提とした安定性・拡張性・リスク対応力を含めた視点で総合的に比較することが重要です。

電源・冷却の信頼性

データセンターの品質を左右する基本要素です。

  • 二回線受電や冗長構成に対応しているか
  • 外気冷却や高効率空調など、省エネに配慮した設備を備えているか(※1)(※2)

安定した電源供給と適切な冷却設計は、IT機器を継続的に稼働させるための前提条件となります。(※3)

物理・運用セキュリティ

重要な情報資産を扱う場合、物理セキュリティ体制の確認は欠かせません。

  • 外周からラックまで段階的に管理されたアクセス設計か
  • 入退室管理やログ取得が運用ルールとして整備されているか
  • 監視記録や運用記録を適切に保管・管理できる体制か

運用ルールが明確なデータセンターほど、長期利用時のリスク低減につながります。(※3)

将来の構成変更に対応できる柔軟性

オンプレミスとクラウドを組み合わせる構成が一般化する中、設備の柔軟性は重要な比較軸です。

  • 電源・空調を段階的に増設できる設計か
  • 専有エリアや区画構成を用途に応じて調整できるか
  • ラックの増設や配置変更が計画的に行えるか

将来の構成変更を想定した設計であれば、IT戦略の見直しにも対応しやすくなります。(※3)

環境性能(ESG対応)

ESGの観点からデータセンターを評価する企業も増えています。

  • 再生可能エネルギーの活用方針が示されているか(※2)
  • PUE改善や省エネ施策に継続的に取り組んでいるか(※1)
  • 環境負荷低減に関する情報開示が行われているか(※2)

環境配慮の姿勢は、企業価値や中長期的な利用判断にも影響します。

クラウド接続の柔軟性

ハイブリッドITを前提とする場合、クラウド接続性も重要です。

  • メガクラウドへの専用線接続に対応しているか
  • 複数キャリアやIXと接続しやすい立地・構成か
  • 通信経路の冗長性を確保できる設計か

構成変更に柔軟なデータセンターほど、将来のIT環境変化に対応しやすくなります。

監視・保守体制の違い

監視・保守体制は、障害時の影響を最小限に抑える要素です。

  • 監視項目が明確で、しきい値が適切に設定されている
  • 24時間対応体制が整備されている
  • 作業手順や変更管理ルールが文書化されている
  • 担当者のスキルが一定水準で維持されている(※3)

クラウドとオンプレミスを繋ぐ最適解としての「閉域網クラウド接続」

企業のITインフラは、クラウドかオンプレミスかの二者択一ではなく、両者を組み合わせる「ハイブリッドクラウド」や、複数のクラウドを併用する「マルチクラウド」へと進化しています。その中で、システム性能やセキュリティに影響を与える重要な要素の一つとして、データセンターとクラウドを専用線で接続する「閉域網クラウド接続」が挙げられます。クラウドは俊敏性に優れ、WebサービスやAI開発など、急な拡張が必要となる領域で効果を発揮することが多いです。
一方で、オンプレミス/データセンターは、低遅延かつ安定した通信、機密データの保持、コストの見通しやすさなどが期待でき、基幹系システムや常時稼働が求められるシステムに適しているケースがあります。閉域網接続は、これらを統合した環境を構築しやすく、安定した通信品質や高速な大容量データ転送、強固なセキュリティ対策を実現する設計となっています。また、マルチクラウド戦略を採用する企業にとっては、AWS・Azure・GCP など複数クラウドを、データセンターをハブとして接続することで、ベンダーロックインのリスクを抑制するといった、各クラウドの得意領域を組み合わせた構成を検討しやすくなります。

【関連記事】クラウドとオンプレミスを繋ぐ最適解

脱炭素経営を加速させる実質再生可能エネルギー対応データセンター

脱炭素化への要求が高まる中、「実質再生可能エネルギー」を利用できるデータセンターは、企業にとって検討すべき有力な選択肢の一つとなっています。企業においては、環境配慮はイメージ面に留まらず、「取引条件」や「企業価値」に影響する重要な経営課題となりつつあります。特にサプライチェーン全体の排出量(Scope3)削減が求められる現在、再エネを利用しないIT基盤を使い続けることが、取引先の要件によっては不利に働く可能性があります。また、温対法の改正により排出量報告の厳格化が進む中、実質再エネ対応のデータセンターを利用することで、IT部門の排出量をゼロとして算定でき、法対応にかかる負担を軽減できる場合があります。さらに、投資家がESG視点で企業を評価する流れが強まっており、電力使用量が大きいデータセンターの再エネ化はRE100達成に向けた重要な要素となり、企業評価や資金調達に影響を与える場合があります。(※2)

【関連記事】脱炭素経営を加速させる「実質再生可能エネルギー」対応データセンター

クラウドからオンプレミスへ?オンプレ回帰の背景と最適解としてのハイブリッドクラウド

クラウド移行が一巡した現在では、一部のシステムをオンプレミスへ戻す「オンプレミス回帰」に関心が高まっています。クラウドは迅速な拡張性や初期費用の低さが強みとして挙げられる一方、利用量の増加に伴いコストが増えやすいことや、通信遅延、データの所在に関する制約、事業者主導で行われるメンテナンス対応などに課題を感じるケースもあります。一方でオンプレミスは、安定した低遅延通信やデータの所在を自社で把握しやすい点、長期利用時のコスト効率などが評価され、基幹システムや大量データ処理、リアルタイム性が求められる分野において再評価される場面があります。ただし、すべてのシステムをオンプレミスに戻すことが最適というわけではありません。クラウドの柔軟性とオンプレミスの信頼性を組み合わせる「ハイブリッドクラウド」は、多くの企業で現実的な選択肢として検討される構成となっています。

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BCPに強いデータセンターを選ぶためのポイント

データセンターのBCP対策では、地震や、台風・豪雨・火山活動など、複数の自然災害を想定した備えが求められます。
重要なのは、災害発生時でも運用を止めず、影響を最小限に抑えられる設計・運用が整っているかという点です。
BCPを意識したデータセンターでは、電源や空調の冗長化、非常用電源の確保、運用ルールの整備といった基本対策に加え、災害特性に応じた対応が組み込まれています。

その一つが火山灰(降灰)への備えです。火山灰は空調や電気設備に影響を与える可能性があり、広範囲かつ長期化しやすい特徴があります。そのため、外気フィルターの強化、防塵設計、冷却系の冗長化、対応手順の明確化などが、BCP対策の一環として整理されていることが重要です。
火山灰対策も含め、災害時の安定運用を前提にしたBCP設計がなされているかは、データセンター選定時の重要な確認ポイントとなります。

【関連記事】火山大国・日本で選ばれるデータセンターとは?

利用規模別の選び方

データセンターの利用方式は、企業のIT規模やシステムの重要度、将来的な拡張計画によって最適な形が異なります。初期コストだけで判断するのではなく、運用負荷・拡張性・BCP対応といった中長期視点で整理することが重要です。

  • ハウジング型:
    ラック単位で利用を開始でき、初期導入のハードルが低い方式です。小規模構成から段階的に拡張しやすく、標準化された設備を前提とした運用に向いています。
  • コロケーション型:
    専有エリアを確保し、ラック配置や電力設計を柔軟に構成できます。多数ラックや高密度構成を想定する場合に適しており、将来的な拡張計画を立てやすい点が特徴です。
  • BCP重視構成:
    単一拠点に依存せず、冗長化構成やバックアップ拠点を組み合わせることで、障害や災害時の業務継続性を高める考え方です。(※3)
    事業継続の重要度が高い業務では、早期に検討されるケースがあります。

小〜中規模利用の判断ポイント

小〜中規模利用(1〜数ラック程度)では、現状の要件を満たしつつ、将来どこまで増える可能性があるかを見極めることがポイントです。

  • 標準的な電源・空調仕様で対応可能
  • 特別な高密度設計や専用空調を必要としない
  • 当面はサーバー台数や処理量が大きく増えない想定

このような条件であれば、ハウジング型を中心に検討しやすくなります。一方で、サーバーの高性能化や集約が進むと、ラックあたりの電力要件が想定以上に増加する可能性があるため、将来的な見直し余地を残した選定が重要です。

大規模利用/多数ラック利用の判断ポイント

数十ラック以上の利用や、業務システムを集約するケースでは、初期設計の自由度が運用効率に大きく影響します。

  • 数十ラック以上の利用実績があり、段階的な増設に対応できる
  • ラック配置、電源容量、冷却方式を含めた柔軟な構成管理が可能
  • 冗長化設計や専用ネットワーク構築に対応している

大規模利用では、将来的な構成変更や拡張が前提となるため、設計変更にどこまで対応できるかを事前に確認することが重要です。

サーバー移設を前提にしたデータセンター選びのポイント

サーバー移設を伴う場合は、単なる設置可否だけでなく、業務影響を最小限に抑えた移行計画が実現できるかが重要になります。

1.搬入経路の確認

サーバーやラックのサイズに対して、ドア幅、エレベーター、床荷重などが適合するかを事前に確認します。

2.電源・空調要件の確認

現行機器の消費電力や発熱量を踏まえ、移設先でも同等以上の電源・冷却条件を確保できるかを確認します。

3.ネットワーク接続の柔軟性

既存システムやクラウドとの接続を維持できるか、冗長構成や帯域拡張に対応できるかを確認します。

4.運用体制・手順の整備状況

入退室管理、作業申請、障害対応などの運用ルールが明確に定義されているかを確認します。

5.災害対策・BCP設計

停電や災害時を想定した設備構成や運用方針が整理されているかを確認することで、移設後の安定運用につながります。(※3)

「セキュアデータセンター®TC4」について

「セキュアデータセンター®TC4」は、当社が自社で運用しているデータセンターとして、企業の基幹システムや重要データの長期運用を想定した設計・運用を行っています。
単なる設備仕様ではなく、日常運用・障害対応・拡張対応までを含めた実運用を前提に構築している点が特徴です。

物理セキュリティ・入退室管理

多層アクセス制御の考え方に基づき、エリアごとに管理レベルを分けた運用を行っています。施設内の状況把握を目的として監視カメラを設置し、入退室管理においては、カード認証に加えてバイオメトリクス認証を含む認証方式を組み合わせた運用設計を採用しています。これにより、利用形態や業務内容に応じた入退室管理が可能となっています。

電源・空調の冗長化

電源および空調設備については、N+1や2N構成といった冗長化設計の考え方を取り入れています。単一障害点を極力排除する設計とし、停電や空調障害といったリスクを想定した設備構成・運用を行っています。

クラウド接続柔軟性

オンプレミスとクラウドを組み合わせた構成を前提に、専用線やマルチキャリア接続を活用したネットワーク設計を検討できる環境を整えています。これにより、ハイブリッドIT環境における段階的な構成変更や拡張に対応しやすくなります。

専用区画・セキュリティ強化

利用形態に応じて、顧客ごとに物理的に区画されたエリアでの運用が可能です。区画単位で管理範囲を明確にすることで、運用ルールや作業手順を整理しやすいセキュリティ運用を行っています。

BCP対応設計

BCP対応設計の一環として、冗長設備の構成や運用ルールを含めた検討を行っています。災害時や障害発生時を想定し、業務継続に向けた体制づくりを支援しています。

ESG・省エネ対応

データセンター運用において、PUE改善や省エネ設備導入に取り組むとともに、再生可能エネルギー活用を含めた環境配慮を意識した運用方針を採用しています。(※1)(※2)

データセンター利用時の導入の流れ

データセンター導入は、単に設備を用意するだけでなく、業務要件・運用体制・将来計画を踏まえた段階的な検討が重要です。一般的な導入の流れは次のとおりです(※3)。

要件整理

どの業務システムを配置するかを明確にし、必要なラック数、電力容量、ネットワーク要件、セキュリティレベルを整理します。
また、BCPや環境配慮といった中長期視点の要件もあわせて検討します。

事業者選定

整理した要件をもとに、電源・空調の信頼性、セキュリティ体制、クラウド接続性などを比較し、候補となる事業者を選定します。将来的な拡張や構成変更への対応可否も重要な判断材料となります。

契約・仕様確認

提供されるサービス内容、保守範囲、障害対応の考え方、契約条件などを確認し、自社要件と整合しているかをチェックします。必要に応じて、契約書や仕様書に要件を反映させます。

設備設計

ラック配置、電源配線、ネットワーク経路、セキュリティ区画などを具体的に設計します。将来の増設や構成変更を見据えた余地を確保することがポイントです。

搬入・設置

サーバーやネットワーク機器の搬入・設置を行います。
搬入経路や作業時間の制約を事前に確認し、業務影響を抑えた計画を立てます。

接続テスト

電源・空調の動作確認、ネットワーク接続、システム起動テストを実施し、想定どおりに稼働するかを確認します。

運用・監視

本稼働後は、監視体制や保守手順に基づき、安定運用を行います。定期的な見直しや改善を行うことで、長期的な利用につなげます。

よくある質問

Q. データセンター選びで重要なポイントは?

A. 災害耐性、電源の冗長化、セキュリティ、将来の拡張性が基本的な判断軸です(※2)。

B. これらは業務の継続性や長期運用に直接影響するため、総合的に確認することが重要です。

Q. 冗長化レベルはどこまで必要ですか?

A. 一般的にはN+1構成以上が検討されるケースが多いですが、システム停止が業務に与える影響度やコストとのバランスを踏まえ、業務特性に応じて判断することが重要です。

Q. クラウド接続は可能ですか?

A. 多くのデータセンターでは、専用線や複数キャリア接続に対応しています。ハイブリッド構成を想定する場合は、帯域拡張や冗長構成への対応可否も確認すると安心です。

Q. 環境配慮は行われていますか?

A. 近年は、PUE改善や再生可能エネルギー活用など、環境負荷低減に向けた取り組みが進められています(※2)。企業のESG方針と合致するかも、選定時のポイントとなります。

Q. サーバー移設時の注意点は?

搬入計画、作業手順、事前バックアップの有無を確認することが重要です。あわせて、移設後のネットワーク接続や運用体制についても事前に整理しておくと、移行後のトラブルを防ぎやすくなります。

引用元・参考文献

  1. 日本データセンター協会(JDCC)
    「PUEガイドライン/ベンチマーク制度」

    https://www.jdcc.or.jp/pue_guide
  2. 経済産業省
    「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」

    https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/ggs/index.html
  3. 日本データセンター協会(JDCC)
    「データセンター サーバ室技術ガイドブック(2025年追補版)」

    https://jdccshop.myshopify.com/collections/frontpage/products